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浅草から世界 人力車夫・冒険家 阿部雅龍さん(後編)

2018/01/01

 浅草って、どんなイメージですか?下町?雷門?外国人の集まる観光地?――――でも、それだけではないのです。多くの老舗が伝統を伝える一方、新しい挑戦者も集う。古さと新しさが繋がる街、それが浅草です。

特に、浅草には多くの文化人を輩出した歴史があります。今もなおこの地に育まれ、経済、カルチャーなど新ジャンルで活躍する人は少なくありません。そんな「浅草人」の魅力にスポットを当てていきます。

 

 

 アマゾン川、ロッキー山脈、北極…。冒険家・阿部雅龍さん(35)は、世界中で極限の旅に挑んできた冒険家だ。一方、彼には浅草のベテラン人力車夫というもう一つの顔もある。浅草で観光客と過ごす非日常と、一人きりで荒野を行く非日常。二足の草鞋で2つの世界を歩く彼にとって、冒険とは、浅草とは何なのかを聞いた。

(COREZO!ASAKUSA編集部 服部良祐)

 

▼前編はコチラ

浅草から世界 人力車夫・冒険家 阿部雅龍さん(前編)

 

 

 

【第1回・後編】
「一期一会で終わらぬ出会いを」

 

 大学卒業以来、阿部さんは一年の約半分を冒険の旅に、残りを浅草での人力車夫の仕事に費やしている。冒険という、現代人が味わえない究極の非日常を体験している身だが、「浅草もまた自分にとっては非日常。それをお客さんと一緒に味わえるのが楽しく、飽きない」

 今はフリーランスの車夫として活躍する阿部さん。街頭に立っている人力車とは違い、基本的に予約制で客を取る。月に50人もオファーが来る人気車夫の一人だ。

 

 

浅草寺やその近くの「観音裏」、スカイツリー周辺などをよく回る。「スカイツリーの点灯する瞬間を見たい」といった客の要望に細かく応え、秋葉原など近辺のいろんな場所に連れていく柔軟性が阿部さんの人気の秘密だ。定番の浅草寺をあえて行かなかったりする「阿部さんお任せ」のコースをお願いされることも少なくない。毎回毎回、客によって違う感じ方をしてくれるのがこの仕事の魅力だという。

 約10年のキャリアは、車夫としてはかなりのベテラン。一回乗ってくれた人が結婚後に伴侶を連れてまた訪れたり、海外で出会った人が、日本人・外国人問わずわざわざ訪日して乗りに来てくれたりするも多い。「一期一会も素晴らしいが、一期一会で終わらぬ出会いがあるのがこの仕事のすばらしさ」と語る。

 

 

人力車夫になってずっと住んでいた浅草だったが、最近は板橋に引っ越している。それでも、冒険が終わると必ず「いの一番で」浅草寺にお参りをすることにしている。「浅草で長い時間を過ごし、ここをベースに世界中を回っている。だから帰ってくると落ち着きますね」  

阿部さんにとって浅草は「冒険に赴く自分からしても、カオスで非日常な街」。渋谷や表参道などのような最先端の街のように、変に肩を張る必要もない。昼から酔っぱらっているおじさんがいたりする風景も悪くないと感じる。。住人がマイペースで入れる空気に魅力を感じている。だから、逆に「最近の傾向として浅草がきれいになりすぎている。どこにでもある観光地になってしまうのが怖い」

 18年末には初めての南極遠征に挑戦する。約2か月間、やはり1人で1130㎞を歩いて南極点を目指す。冒険家は浅草で車夫としての「非日常」に癒されつつ、まだ見ぬ世界との出会いを心待ちにしている。

 

 

【阿部雅龍:プロフィール】

 秋田県出身。秋田大卒。35歳。人力車夫を続けながら冒険家として活躍。人力での冒険距離20,000km以上。南米自転車縦断(11,000km)、北米大陸ロッキー山脈縦貫トレイル踏破(5,400km)、乾季アマゾン川いかだ下り (2,000km)、カナダ北極圏徒歩(500km)、カナダ北極圏徒歩(750km)、グリーンランド北極圏徒歩(750㎞)、人力車全国一宮参拝(6,400km)。

 

阿部雅龍 - Wikipedia

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この記事を書いた人

服部 良祐

1983年東京生まれ。