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「浅草の魅力は『歴史』と『人』」--人をつなぎ街を活かす「まちづくり」のプロ・今村ひろゆきさん

2018/09/15
今回の取材先は、入谷を中心にシェアアトリエの運営や創業支援など、様々な活動をされている、「まちづくり会社ドラマチック」代表の今村ひろゆきさん。

様々な都市を見てきた今村さんだからこそ語ることができる、東東京エリアの良さについて、語っていただきました。
 
…が、取材前に今村さんのことを調べているうちに、浅草出身ライターの私・中村と今村さんに、驚きの共通点があることが発覚しました
 
驚きの共通点、とは?

――本日はよろしくお願いいたします。
あの…いきなりで恐縮ですが、以前浅草で、元サンダル屋だった物件をリノベーションして、シェアオフィスを運営されていましたよね?
 
あぁ、「LwP asakusa」ですね。
もうクローズしましたが、4年ほど前まで運営していました。

――実は私、小さい頃そこに住んでいたんです。
 
 
えっ?! あのサンダル屋の娘さんてことですか?
 
――はい、そうです。父の代で店はたたんで、その後もしばらく住んでいたんですが、家を売りに出すことになって、浅草の別の場所に家族ごと引っ越したんです。

そうだったんですね! いやぁ、驚いたな…!
 
――シェアオフィスになってからのことは、詳しくは知らなくて。本日はそのお話も含めて、いろいろお伺いできればと思っています。
 
わかりました。よろしくお願いします。

面白い人や活動で、街を活性化させる「まちづくり」
 
――まず最初に、事業の内容を教えていただいてもいいでしょうか。

ここ入谷の「reboot(リブート)」、品川区 中延の「インストールの途中だビル」という、クリエイター向けのシェアアトリエを2件運営しています。
 
入谷の一階は、「SOOO dramatic!(ソードラマチック)」というイベントスペースになっているのですが、そこでトークイベントやものづくりワークショップもおこなっています。
 
あとは、地域イベント「浅草エーラウンド」の実行委員や、東東京エリアの創業支援ネットワーク「EastSide GoodSide(イッサイガッサイ) 」の運営メンバー、千葉県習志野市の公共施設の運営に携わったりもしています。
 

 
――かなり幅広い活動をされていますよね。共通している活動の「軸」はあるのでしょうか。
 
まちづくり=まちの活動人口を増やす」というのが軸です。
面白い人や活動が根付くことで街は活性化すると考えているので、シェアアトリエやイベントスペースの運営も、参加しているプロジェクトも、すべてこの軸につながる活動になっています。
 
――そもそも、「まちづくり」をお仕事にしようとしたきっかけは何だったんでしょう。
 
もともと会社員のときに、不動産会社に商業施設の活用を企画・提案する、という仕事をしていましたが、企画までが仕事なので開業後のお客さんの喜ぶ顔が見えないことや、もし自分が運営に携わったら地域や街の人たちと協働し面白い施設がつくれるのにと、モヤモヤしていたんです。

もっと地域に寄り添って、住む人たちとコミュニケーションをとりながら一緒につくっていくような、人の顔が見えるまちづくりをしたいと考えて、この事業をはじめました。
 
 
――入谷を選ばれたのはなぜなんでしょうか。ご出身がこのあたりとか?

いえ、出身は千葉県松戸市です。
事業を始めるにあたり、街にコミュニティがあり、地域自体に観光などの目玉になるようなものがあるところ、という視点で探していました。

ちょうどスカイツリーが建設されている時期で、東東京エリアがこれから栄えてきそうだと感じていたので、最初は浅草にシェアオフィス兼イベントスペース「LwP asakusa」をつくりました。
 
--たしか1階がイベントスペースでしたよね。
 
そうですね。そこでのイベントなどを通じて地域の方と徐々につながりができていく中で、台東区を盛り上げてくれるような人に貸したい、という思いを持った入谷のビルオーナーさんに声をかけていただいて、今は入谷に拠点を移しています。
 
実は、10月に開催する、革とモノづくりの祭典「浅草エーラウンド」も、「LwP asakusa」がきっかけで生まれたイベントなんですよ。
 
浅草エーラウンド|http://a-round.info/
 
――そうなんですね!自分の家がイベント発祥の地というのは、なんだか感慨深いです(笑)。
「浅草エーラウンド」は、どんなイベントなんですか。

革靴の生産日本一である浅草をもっと知ってもらおう、というコンセプトのイベントです。
革の仕入れや、普段入れないような工場の見学や、靴を一足作ることができるワークショップなんかもあります。
 
ここまで革に特化したイベントは他にないので、このイベントのために泊まりがけで来てくれるような方も沢山いらっしゃいます。

春と秋に開催していて、次回は10/19(金)〜10/21(日)なので、ぜひ遊びにきてください!
 
 
▼春に開催したイベントレポートはこちら

 
東東京モノづくりHUB「EastSide GoodSide(イッサイガッサイ)」

――今村さんは、東東京エリアの創業者支援ネットワーク「イッサイガッサイ」の運営にも携わっていらっしゃいますよね。どういった活動をされているのでしょうか。
 
こちらは東京都に採択されている事業なんですが、創業スクールの開催や創業者インタビューの連載などを通じて、“東東京エリアに創業者を増やす”というのがミッションです。
 
「創業者のサポートを通じ東東京をワクワクする地域に変える」というコンセプトで、勉強会や先輩の会社訪問、ゲストを招いたトークイベントなどもおこなっています。
 
 
 
――創業者の方々は、どういった業種の方が多いんですか。

現状は、モノづくり系のクリエイターが多いですね。ただ、モノづくり系の人たちは、一歩ずつ成長していくというマインドの人が多いので、IT系のスタートアップの方にもっと来てもらい、交流できたらいいと思っています。
 
スタートアップの人たちは、短期間で会社を成長させるという視点が開けているので、モノづくりの人たちにとってはすごくいい刺激になると思うんです。
 
浅草は海外からの認知度もありますし、歴史あるモノづくりの土壌もある。

観光や地域産業とITを絡ませたいとか、そういう方々が東東京に来てもらえたら、これまでにないものが生まれるんじゃないかと考えています。
 
 
 
東東京、浅草の魅力は、「歴史」と「人」
 
――まちづくり事業を通していろんな街を見てこられた今村さんから見て、浅草をはじめとする、東東京エリアの魅力や特徴はどういったところにあるのでしょうか。
 
街そのものに歴史があって、それが現代にも受け継がれているというのが一番の魅力だと思います
 
たとえば、革とモノづくりの祭典「浅草エーラウンド」が開催される奥浅草エリアは、約150年前、草履から革靴への転換の時期に革製品を作り始めた場所で、そこから現在まで革の文化が脈々と続いているんです。
 
 
――歴史がある、というのは確かにそうですね。
友人にも、親子何代にもわたって、浅草で商売を営んでいる子もいます。
 
その一方で、時代が変わってきていて、同じやり方を続けるだけでは厳しくなってきている面もあります。
 
でもみんな、なんとかしなくちゃという危機感があるので、僕らのような新しい人間も受け入れてくれるんですよ。
 
浅草エーラウンドの実行委員の人たちはとくにオープンマインドで、いろんな人たちの意見を取り入れていこう、と考えている人たちなので、すごくやりやすいんです。
 
 
――古き良きを守るために、新しいものも柔軟に取り入れていく、ということですね。

そうですね。
あとは、信念をもって行動している人が多い。みんな情熱的ですね。
 
モノづくり系の会社さんはじめ、お肉屋さんとか下駄屋さんなど、浅草界隈で商売を営んでいる知り合いは何人もいますが、次の世代に引き継ごうという、強い思いを持ってやってらっしゃる方ばかりです。
 
そういう人たちを見ていると、自分も軸になるような思いや信念をきちんと持たないといけない、と身が引き締まるような思いになります。
 
 

――最後に、この先何かやりたいことはありますか。
 
いままでの活動や、イベントで話してきた内容をひとつにまとめたものを作って、それをきっかけに、もっといろんな地域のまちづくりに関わっていきたいと思っています。
 
たとえば海外だと、まちづくりのノウハウがまとまっている資料がネットで買えて、買ったあとにサポートが必要であれば、ノウハウ発行元の会社に追加で費用を払ってコンサルを受けることができるようなプログラムもあるんです。
 
――そんなやり方もあるんですね。
 
ええ。同じような方法をとってもいいですし、ノウハウをまとめて、他の組織が使えるようにしたりすれば、もっといろんな街のお手伝いができるんじゃないかと考えています。
 
いろんな街にもっと関わっていって、そこにいる人たちと一緒にまちづくりをしていきたいです。
そして、面白くて魅力的な街がどんどん増えていったらいいなと思っています。
 
――今村さん、ありがとうございました!
 
 
終わりに

20年以上過ごした、かつての我が家がシェアオフィスになったことを知ったとき、
 
「私の家は、もう私の家じゃないんだ」
 
ということが、頭では理解できても心は納得できず、なんとも言いようのない複雑な気持ちが心の片隅に、ずっと残っていました。

ですが今回の取材で、そのシェアオフィスから生まれた様々な人のつながりや新しい取り組みを知ることができたおかげで、「これでよかったんだ」と、ふっと心が楽になったような、そんな気がしました。
 
歴史があり、それが現在に受け継がれている
いま生まれている新しいものも、きっと後世に脈々とつながっていくものだと思います。

その中の、ほんのひとかけらに関わることができたこと。
そしてこの取材に携わることができたことを、嬉しく思います。
 

2010年 LwP asakusa 2階シェアオフィスの様子

 
 
お知らせ

10月には、記事内で紹介した革とモノづくりの祭典「浅草エーラウンド」や、老舗や新しい店舗が入り混じる街・入谷で「特別なおもてなし」を受けられる「グッデイ入谷」というイベントもあります。

この機会にぜひ、東東京エリアに遊びにきてみてください♪
 
▼グッデイ入谷 2018
日程:10/11(木)〜10/14(日)

 
▼革とモノづくりの祭典「浅草エーラウンド 2018」
日程:10/19(金)〜10/21(日)

 
また、今村さんの会社「まちづくり会社ドラマチック」が運営する「コワーキング&シェアアトリエreboot」では、東東京を拠点にして一緒に働くメンバーを募集しています。

東東京や台東区内のまちづくりに関わるデザインや編集・撮影・PRの仕事の依頼が増えているようなので、仕事を通じ、街に関わりたいという方は利用を検討してみては!?
 
▼コワーキング&シェアアトリエreboot

 
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この記事を書いた人

中村 英里

浅草生まれ浅草育ち。
Webデザイン、ディレクター、広報等を経てライター に。
好きなもの:Web/IT・スタートアップ・下町・純喫茶などレトロなもの
Twitter:@2erire7