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日本酒とケーキは幸せの象徴。西浅草黒猫亭で楽しむ昭和モダンと横溝正史

2019/01/06
時刻は14時30分を回ったところ。クリスマスとは無縁そうな観光客や、人力車のお兄さんたちを横目に、浅草の街を歩く。

浅草の中心街から一本奥に入った道に、純喫茶のような落ち着いた雰囲気の中、お酒も楽しめる「西浅草黒猫亭」がある。店主を務めるのは宇都木由美さん。綺麗な黒髪で、着物がよく似合う女性だ。
 
くっきりとした二重がすごく魅力的だった…。
 
 

お店に入った瞬間、今まで歩いてきた浅草の道とは全く違う世界が現れる。横溝正史作品の「黒猫亭事件」からインスピレーションを得たお店だ。築50年を超えている建物で、元々はスナックだったらしい。水回りを少しだけリノベーションして、この形になったそうだ。
 
 
店主は、無類の横溝正史のファン。「何十年か前、横溝正史の映像作品を見た。そこから原作に入り、その世界観に惹かれた」とニコニコしながら語る店主。奥の棚にびっしりと並べられているのは、横溝正史作品。表紙違いなどを除いて、全て揃っている。
 
文庫本が全部揃ったらお店を開くのだろう」そう思いながら本を集め、2年間お店の構想を練って生まれたのが「西浅草黒猫亭」である。


三つ首塔と黒猫亭と昭和モダン

 
 
一番好きなのは『三つ首塔』なんです」と、店主が教えてくれる。「お店の名前にするには少し縁起が悪かったのかな」なんて思いながら店名を黒猫亭にした理由を聞くと「特定の場所がタイトルになっていたから」。
 
なるほど。「犬神家の一族」が店名だとさすがにちょっとアレか。みんな逆さまになっているのかと思ってしまう。私だけか。
 
映像作品の黒猫亭がそのまま現実世界に出て来たような店内。「家具や食器を集めるときも、映像を見ながら、雰囲気に合ったものを選んだ」。天才的センスだ。
 
店内に流れる昔の曲、少し薄暗い店内で、着物の美人店主。最高の空間。
 
店内のいたるところに黒猫が。お客さんからもらうことが多いらしい。


日本酒とケーキは最強にして最高の組み合わせ

 
黒猫亭に訪れるのは、10代〜80代と幅広い年代の男女。10代の若者たちは、Twitterをきっかけに「黒猫亭のクリームソーダとプリンが食べたくて!」とやってくる。昼間から飲んでいるおじいちゃんや観光客などもやってくる。ガラガラヘビはきっと来ない。
 
その中でも、お酒が好きな人が好んで頼むメニューに「日本酒とケーキ」の組み合わせがある。私が黒猫亭取材をしたかった理由も、「経費で日本酒とケーキが食べたい」からだった。
 

日本酒に合うケーキは、パティシエでもある店主が、店にある30年くらい前のオーブンで焼き上げる。
 

取材中も「ティン!」と鳴いていた。
 
 
ケーキはカウンターの上に陳列してあり、見ながら選べる。実物を見てしまうと、全部が美味しそうで全く選べない。
 
どうしても選べなかったので、飲んでみたい日本酒に合うケーキをセレクトしてもらうことにした。
 
 
店主がセレクトしてくれたのは、香りが良く、すっきりとした味わいの日本酒「いづみ橋」と、「日本酒漬けレーズンのケーキ」。ケーキが乗っている食器も、日本酒が入っているグラスも、平成より昔のもの。グラスはお客さんからのいただきものだ。
 
 
日本酒漬けレーズンのケーキ」を一口食べると、口の中が一気に日本酒になる。お酒がゲロゲロに弱い人だったら、もしかしたらこの風味だけでいい気分になってしまうかもしれない。それくらい、ステキな風味。
 
 
右のほっぺにケーキを入れたまま、日本酒も飲むと、そこはヘブン。口の中が天国。日本酒には刺身やエイヒレなどのおつまみしか合わせて来なかったけれど、甘いものを合わせるのも最高に美味しい。


家で「日本酒とスイーツ」をやるとしたら?

 
ふと、日本酒を飲みながらクッキーを食べてみたら美味しかった。」そんな、ちょっとした偶然で生まれた、日本酒と洋菓子の組み合わせ。
 
お店で楽しむのはもちろんだけど、家でもやりたい!」私の突拍子もないワガママに対して店主が教えてくれたレシピがこちら。
 
 
 
カステラに日本酒を浸して食べるなんて思いつきもしなかった…さすがプロ。そして、「カステラ×日本酒」以外にもアイスに日本酒をかける「日本酒アフォガード」をおすすめしてもらった。特に、熟成した日本酒を使うことでより美味しくなるそう。
 
私も、あなたも。自宅での飲酒ライフがより良いものになりますように。

店主の「好き」を詰め合わせた空間「西浅草黒猫亭」

 
西浅草黒猫亭には、店主の「好き」がたくさん詰まっている。横溝正史や日本酒、甘いもの、着物。店主の「好き」に共感をした人がよく集まる空間だ。

もし、この記事を読んだ人の中で、何か一つでも「好き」なものがある人は、ぜひ足を運んでみてほしい。きっと、「自分の好きなものでも、こんな空間があるといいのに」と思うはずだから。
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この記事を書いた人

吉川 真緒

フリーでライター、カメラマンなどをしている吉川真緒です。趣味は酒と女。最近のマイブームは麦焼酎と日本酒。人生の中心はアイドル。酔っ払うとねむくなるタイプです。

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