search

届け!ふわふわのパンに幸せを挟んだコッペパン。コッペパン専門店iacoupéオーナー金井直子さん

2018/10/01
あんバタにピスタチオ、ステーキ、ナポリタン…!ショーケースにはカラフルで可愛いコッペパンがずらっと並びます。
 
「ねー、どれにする?」
「これもいいけどこっちもおいしそう。迷っちゃうなぁ…!」
 
ここは多くの人が行き交う上野駅さくらテラス。今日はその中にあるコッペパン専門店iacoupé (イアコッペ)に伺いました。実はこのイアコッペは西日暮里にあるパン屋さん、ianak!(イアナック)の2号店。
 
“パン屋さんは幸せが溢れる場所”、そう笑顔で教えてくれたのはオーナーの金井直子さんです。
ーー2006年にオーナーシェフの出身地である西日暮里で開店されましたが、西日暮里ってどんな街ですか?
 
西日暮里は山手線で一番最後にできた駅。大きな学校もあるので、学生さんが多くて、塾なんかも多いですね。そういう面もありつつ、やっぱり下町かな。谷根千も近くて、イアナックがあるところは住宅街なので結構静か。下町に隣接する昔ながらの町っていう感じですね。
 
ーー地元密着の西日暮里と、ターミナル駅である上野との違い、上野近辺の人との縁やつながりを感じますか?
 
イアナックはオープンして12年やってるんですが、地元のお客さんが多いですね。お客も知った顔、オープンから通ってくださるお客さんが多い。上野は観光地なので、お客さんへの接し方は全然変わりますね。
 
イアナックは「こんにちは、いつものですね」という感じの雰囲気です。 最近は知っているお客さんがイアコッペに来てくれることや、イアコッペを好きになってくれたお客さんがイアナックに行ってくださることも増えてきました。
 
ーーとてもあたたかい雰囲気なんですね。イアナックが地域の方に親しまれるパン屋さんになっていくまで、大変だったことは何ですか?
 
主人がフランス系のパン屋さんで修行してたこともあり、ハード系のパンが得意なんです。それで、オープンしたとき、ハード系のものを中心に品揃えしてたんですけど、全く受けず…。近所の方から「これ硬いよ!」っていう声が多かったですね。 近所に息子たちも通っている幼稚園があるんですけど、そこの通学路にお店があるので最初は知ってる方々が買いに来てくれて。
 
このバリエーションだと買うものがない、そんなお客さんの声が聞こえたので、西日暮里に合うものを作らないとダメだね、とメニューを考え直しました。主人は作ったことのなかったチョココロネやメロンパンも挑戦したんですよ…!
 
ーーお客さんの声に応えて一緒にメニューを作られたんですね!
 
そうですね。おばあちゃんやお子さん連れの方にも食べてもらえるようにメニューを変えていったら、ハード系も売れるようになった。最初は硬いと言われながらも、お客さんが増えるに連れて、「こっちも食べてみようか」とハード系もだんだん浸透してきました。今ではメニューも増えてだんだん地域に馴染んできた気がしますね。
 
ーーなるほど、それはとても嬉しいですね!
 
今ならやれると思った
 
ーーイアコッペを開店しようと思ったきっかけを教えてください。
 
2014年にこちらのビルが建て替わりました。ビルのオーナーさんがチェーン店が多く入っているので地元感の出るようなお店ということでパン屋さんを入れたい、という話があり、うちを見つけていただいた形です。
 
 
ーーコッペパン専門店に決めたきっかけなどあったんですか?
 
店舗が5坪だったので、パンを作る場所が取れない。パンを運ぶだけになってしまうので、何をしようかということになりました。イアナック自体も決して広いわけではなくて、同じような形態のものを運ぶって行っても限度があるし、焼きたてっていうわけにもいかないし、、、って悩んでたんです。
 
 
何をするかアイデアを出している時、主人が「コッペパンなら焼けるよ!」という話になりました。じゃあ、パンに挟むのは私が店舗でやるからって。それでコッペパン屋さんに決まりました。なので狭さがきっかけですね。それと今ならやれるって思ったんですよね。
 
ーー今ならやれる、ですか?
 
私、実は商業施設ちょっとやってみたくって。コッペパン屋さんをやりたいというのはなかったんだけど、このお店はちょうどタイミングが良くて。主人は職人気質。だから主人はパン作り、私はお店周りという感じで役割を分けて回しています。 白と黒のコントラストを美しく
 
ーーショーケースにはたくさんのコッペパンと、かわいらしい名前が並んでいます。メニューはみんなで考えるんですか?
 
メニューはイアコッペのスタッフの女の子たちが考えてますね。主人はメニューに関してはノータッチ。最初メニューは多くなかったんですけど、こんなのどう?を繰り返して増えてきましたね。あとは、母体がパン屋なので、パンに特徴をつけようというのがあって、黒くしたり、ブリオッシュ、紅茶風などを主人にオーダーして、やっています。
 
 
ーーそんなお二人の作るコッペパンづくりの楽しさやこだわりを教えてください。 
 
みんなそれぞれあると思うんですけど、私はあんバタが好きですね。あんこを綺麗に塗ることをこだわり、うちのバターはホイップバターといって激しくあわ立ててふわっとさせるんですけど、それを絞りに入れてシュッと引く。その白と黒のコントラスト、綺麗な塗りっぷりを最初に教えるときからこだわってますね。あんバタは一番の人気商品。どんな世代でも買っていかれますね。
 
 
ーー2つのお店を行き来してなかなかお休みも取れないかと思いますが、お休みは何をして過ごされるんですか?
 
立ち上げたときは休みが全くなかったんですが、最近は少しずつ休みが取れるようになりました。ただ、今まで突っ走ってきたので、結構それが当たり前になっていて…。わたし趣味がないんですよ…(笑)
 
漫画読んだり、だらっとするのが好きですね。パン屋を始めた時は子供がが幼児園とかだったので、当時は記憶がないほど忙しかった。やっと最近ひと段落、区切りがついた感じがしますね。たまに休みがあったりすると、主人とちょっとその辺散歩したりご飯食べに行ったりとかしてますね。
 
パンってすごく喜んでもらえる
 
ーー金井さんが思うパンの魅力を教えてください。
 
私は職人ではないので、主人とはまたちょっと違うかもしれないんですけど、パンってすごく喜んでもらえるんですよ。パン屋さん作った時も周りの方に「わー!パン屋さんできた!」って喜んでもらえたんです。 売れる売れないは抜きにして、嫌がられることはなくて。朝早くからいい香りがして、自分がお店にいても幸せな気分になりますよね。
 
そんなに休める商売ではないし、儲かる商売ではない。大変だけど、それでも幸せ感が感じられるんですよね。 焼きたてのあの香りに、「なんて幸せだろう…!」って。パン屋さんという空間が幸せなんです。その感じがとてもいいお仕事だなって。喜んでもらえるっていうのは嬉しいですよね。
 
ーーわぁ!素敵ですね!私もパン屋さん大好きです。そんな金井さんが一番好きなパンはなんですか?
 
そうですね〜。好きなパンは…バケットかな。とても好きで、よく食べてますね。あとは主人の原点ということもあるのかもしれないですが、バケッドが美味しいって言われるとなんか嬉しくなっちゃいますね。
 
ーー最後に、これからやってみたいこと、チャレンジしたいことはありますか?
 
もういっかって、今年からちょっとずつお休みもらえるようになってきて考えるようになっちゃった。人がいなくてガツガツやってる時は自分が働くしかないんですけど、自分がいなくても回るようにすると、こんな感じでいいかなって思ってたりもしてたんですけど、もうちょっと頑張ろうって思ってます。まだ先は長いですからね。新たなことをちょっと考えてます。
 
ーー具体的になにかありますか?
 
カフェとかやってみたいなって。今までは自分がやるしかない、っていう感じだったんですけど、スタッフさんとかといい出会いもあって。ベースはイアナックのパン中心。その世界観を守りつつ、また違った形をつくれたらいいですね。
 
10年やってきて、引き出しも増えてきて、ありがたいことにお客さんにもおいしいって言われるようになって。本当に感謝の気持ちでいっぱい。でも新しいことを始めると、今までのものがおろそかになって敬遠されることもありがち。だからそれは忘れちゃいけないなって。いつものように、おいしいものをちゃんと届ける、そしてちょっとだけ新しいことをやっていこうと思っています。
 
 
取材の後、一番人気だというあんバタを持って上野公園に行きました。金井さんがおっしゃっていた通り、シュッとしたあんことホイップバター、黒と白のコントラストが美しい。大きな口で頬張ると優しいあんことふわふわのホイップバターのちょうどいい塩気が重なり、とても幸せな気持ちになりました。幸せが挟まったコッペパン、皆さんも食べにいってみませんか?
Original

この記事を書いた人

せせ なおこ

福岡県出身。あんこが大好きな和菓子女子。和菓子メディア「せせ日和」運営。和菓子を好きになったきっかけはおばあちゃんとつくったおはぎ。おいしい和菓子のためならどこでも行っちゃう和菓子ライター。